マルク=シャガール による
バレエ「アレコ」のための背景画。

「アレコ」は4幕構成で、
第1幕、第2幕、第4幕は青森県立美術館に常設、所蔵されています。
なぜか第3幕だけが、
フィラデルフィア美術館に収蔵されているのですが、
ですが!
今、青森に第1幕~第4幕のすべてが揃っているのです。

しかも、この本物の背景画で「アレコ」を上演するという
とても熱量のあるすごいプロジェクトが数年越しに実現しました。
青森県立美術館の学芸員さんにシャガールマニアの方がいて、
その方のシャガール愛によって実現したプロジェクトです。
グッジョブ!
これを知って、行かないわけにはいかないので、

行ってきました青森
秒でSOLDOUTとなったチケットが手に入ったのがまず奇跡。
シャガールは、この背景画を手掛けた際、
「何かをうつし取るんじゃなく、アレコの中に埋没したかった」
「色彩だけに演じ語らせたかった」
と。

バレエの背景画として、
舞台美術としては、
実に53年ぶり(!) に息吹を吹き返した瞬間でした。
亡きシャガールも、どれだけ嬉しかったでしょう。
その人が亡くなっても、作品が生きているってすごいことです。

広大な平原をこの大きな大きな画に表現し、
これぞシャガールな色遣い。

この迫り来る本物に、
元新国の宝満直也さんが演出振付を手掛け、
若手のホープ、牧で活躍中の大川くん(青森出身)と
テッシーことNBAの勅使河原綾乃さんが主役を務めました。

物語はプーシキンの「ジプシー」を元に、
音楽はチャイコフスキーピアノ三重奏をオーケストラ版に、
衣裳も忠実に再現され、
歴史的な公演だったと思います。

カーテンコールのみ撮影OK。
最近は、こういうの多いですね。
バレエのストーリーって、
バヤもジゼルもエスメもシルフィードも、
男性が二股をかけるストーリーばかりですが、
この「アレコ」は、
女性がココロ変わりして別の男性を好きになってしまうお話です。
たまには、こんなパターンもいいでしょう(笑
男性は、あっちも好きこっちも好きで
その優柔不断さが結局は両方の女性を傷つけ、
結果として地獄に堕ちるパターンはバレエあるある(ざまーみろw
対して女性というのは、
何気ない瞬間にスッとココロ変わりして、
はい次!という潔さ。
いつも時代も男女の性(さが)というのは変わらないのかもしれませんね。
大川くんの発狂シーンはド迫力で、
アレコが完全に憑依していました。
踊りの残像も、
音楽の響きも、
照明の余韻も、

すべてこの画が受け止め、
色彩と空間が見事に一体化していました。
観て帰るだけの弾丸青森でしたが、

それでも
行って良かった
貴重な空間に立ち合わせてもらえました。
カテゴリー: バレエ雑学
2024/11/12弾丸青森
2023/08/14雑学 眠り3幕宝石
眠れる森の美女 第3幕 宝石の踊り

3幕は、オーロラ姫とデジレ王子の結婚の場です。
結婚式にふさわしい、宮殿にふさわしい、
貴族たちの宝石を表現しています。
金、銀、サファイヤ、ダイヤモンドで役名を表すことが多いです。
が、
金や銀は貴金属であって石ではない!と細かい舞台人もいて(確かにね笑
ルビーやエメラルドに名が変わることもあります。
私はそこまで気にしないので、
金、銀、でいくタイプです。
金の精は、
リラの精第3幕のVa.として踊られることもあります。
銀の精は、
パ・ド・トロワとして踊られることも少なくありません。
サファイヤは、
ナチョ・ドゥアト版、PDDバージョン、男性ソロだったり、
演出が様々です。
今回私たちは、この音楽を用いてオパールの精と名付けて踊ります。
名前をつけるのに悩んだんだよね~
宝石って全員が板に乗ったときカラフルでキラキラ魅せたくて、
この役にはピンクとブルーを使うことにしたのでオパールがふさわしいかな、と。
ダイヤモンドは、ダイヤモンド。
これしか言えない。
だってダイヤモンドだから(笑
細かく見ると振付の違いは人により少しありますが、
ダイヤモンドは宝石のボスです。
宝石の踊りは、
豪華さや高貴さも大事です。
でもそれだけじゃなくて、
宝石ってそれぞれストーンパワーを持っているでしょ。
そんな不思議なパワー、エネルギー。
そういうものを表現してほしいと思っています。
今回、
少人数で踊るのが初めてとなるこの子たちには、
デュエット方式で役を任せ、
ダイヤだけがソロです(なぜってボスだからw

総勢7人で宝石の踊りを創り上げます。
まだ始まったばかりの、私たちの宝石です。
2022/12/29純正律と平均律
今日は、音楽雑学。
「純正律」 「平均律」って
ピアノをやっていたり、
吹奏楽や管弦楽をやっている人は
知ってると思います。
簡単に言うと、
アナログ時計とデジタル時計の違いみたいな感じかな。
もうちょっと突っ込んで言うと、
純正律は「波」の観点から音が創られていて、
平均律は「数字」の観点から音が創られています。
1オクターブって12音からできているでしょ。
オクターブを12分割しています。
でも純正律は音を分割できません。
波だから。
私は楽器を演奏したりすることはしない(できない)んですが、
音楽は突き詰めていくと
とことん理数系だな~と思います。
そもそも12音階のオクターブの元は、
ピタゴラス音律と言われる21音です。
ピタゴラスが出てきちゃうところが、もう数学だよね笑

1オクターブ音階が上がると、
周波数比は2倍になる。
1オクターブ下がれば、
周波数比は半分。
不快に感じる音の単位を「デジベル」って呼びますよね。
人の耳は音圧が10倍になったとき、
音の大きさが2倍になったと感じるそうです。
その2つの音を比較して対数を使って表すのがデシベル。
ハードロックやヘビメタをデシベル呼ばわりする人がいるけど、
私はそうは思わないなぁ。
音の良い悪いは、人によって感じ方もいろいろだから、
理屈と感性の境界線が難しい世界ですね。
というふうに、
音を掘り下げて知っていくと必ず数字がまとわりついてくるのね。
私たちがいかに平均律の音の中で生活しているかがわかります。
今、私たちを囲んでいるのはほぼすべてが平均律。
BTSもSnow ManもSixTONESもキンプリも何トカ坂も
みーんな平均律。
じゃあ純正律って一体何よってなるじゃん?
簡単に言っちゃうと結局、数字で片付けられない音。
理屈でなく、感性の音って言ったらいいのかなぁ。
有名どころだとenya(エンヤ)は純正律を追求して音楽創っているアーティストです。
エンヤを聴けばなんとなくわかるよね。
数字で片づけられない音、とか
感性の音、とかいうのが。
でもエンヤって、どの曲も同じような曲調に感じませんか?
この「調」がクセモノでね。
純正律は、転調ができないのです。
(いちいちチューニングし直さないと転調できないってこと)
だから平均律が生まれたと言ってもいい。
ハ長調とかニ短調とか、クラシックでもよく出てくるでしょ。
あれは平均律ならではなんだよね。
エンヤは、彼女の声が澄んでいるっていうのも大きいと思うけど、
純正律って音が澄んでるのよ。和音でも。
音が水平に走っている。
音が独立している。
音が音を邪魔しない。
音の美しさが重なっていく。
私はそう感じます。
こういうのって、
えー興味あるって人と
へーで終わっちゃう人と
真っ二つだと思う。
ま、そういうもん(笑)。
興味ある人は、見てみてください↓
私はこれほどわかりやすく説明してくれる人はいないと思う。
音楽家の秋山公良さん↓
ということで、
今日はちょっと難しい純正律と平均律のお話しでした。
ちなみにレッスン中にみんなが聴いている音楽は、
平均律だよ
2022/12/27アーティゾン美術館
くるみ割り人形のマチネとソワレの間には、
アーティゾン美術館へ飛び
パリ・オペラ座展へ。

今、フランス国立美術館をはじめとする国内外から
作品が日本に集結してるんです。
マリー・タリオーニが履いていた当時のトウシューズや
彼女が所有していたパスポートも展示されてました。
サン=サーンスに宛てた公演招待状や
バレエ・リュスの公式プログラムやポスター。
こんな貴重なものが時を経て今でも残っているなんてロマンだね。
日本の農村を描いた「ジャポニズム・バレエ」の資料。
当時はまだ海外への渡航もひときわ特別なことだったと思いますが、
あの時代にフランスで日本を題材にした作品が上演されていたっていうのは、
すごいことです。
衣裳の展示もありました。
毛利巨男さんが30年ほど前に手掛けた、
ブルメイステル版「白鳥の湖」の女王 の衣裳は鮮烈で圧巻でした!
ほかにも、
森英恵さんの「シンデレラ」ガラスの靴、
クリスチャン・ラクロワの「シェへラザート」衣裳、
高田賢三さんの「魔笛」夜の女王のデザイン画、
マーク・ジェイコブス、カール・ラガーフェルドの衣裳デザインなど、
もっと時間をかけて見たかったな~。
パリ・オペラ座 ~響き合う芸術の殿堂~
アーティゾン美術館(旧ブリジストン美術館)
2023.2.5まで
2022/12/26クリスマスDAY
クリスマスはクリスマスらしく
クリスマスを思いっきり浴びよう!
ってことで、
「くるみ割り人形」のはしご(笑)


「くるみ割り人形」といっても、
ワイノーネン版
ピーターライト版
イーグリング版
そのバレエ団のオリジナル版
など
さまざまな版があります。
この版の違いを感じるのもおもしろいです
そして公演によって、
舞台セット
小道具
照明
衣裳
演出
などにもそれぞれにこだわりがあります。
とにかく「くるみ割り人形」は、楽しいね
1幕のねずみと兵隊の戦いっぷりは言うまでも無く、
1幕の雪の精や2幕の花のワルツ、
そして私は、
1幕ドロッセルマイヤーの甥っ子役にも目を凝らしてしまいます。
脇役なんだけどね。
あと、
1幕でのおじいちゃん役の茶目っ気度にも注目(解る人はわかるね?笑)。
2022/08/01トウシューズ雑学③
昨日の記事で「神」というワードが出てきました。
舞踊は、神とは切っても切れない関係にあります。
そもそも、
私たちは農耕民族で、
豊作を祈ること=祭り=舞踊

東洋人である私たちにとって、
「神」は、「地」に存在します。
これに対し、
西洋では「神」は、「天」に存在します。

こんなイメージだね ↑
日本の伝統芸能はすべてといっていいほど
膝を曲げ、腰を落とし、重心は常に下にあります。
日本舞踊も、

歌舞伎も、

能楽も。

阿波踊りや盆踊りも、
そうですね。
日本から少し範囲を拡げて見てみても、
東洋圏の民族舞踊は、重心が下にあるものがほとんどです。
これは、
「神」に近づきたいという想いからです。
だから、
私たちが祈るとき、お参りするときは、

頭を垂れます。
片や、
西洋の神は天に存在しますから、
天に近づきたい。
そのため、西洋圏の踊りは
もっと高く。もっと高く。

この想いが、
トウシューズを誕生させたのでしょう。
だから西洋の方たちが祈りを捧げるときは、

天を仰ぎます。
「舞踊」とは「神」に捧げるもの。
神の存在が地にあるのか、天にあるのか、で
重心の位置が変わるのです。
そしてこれは、
音楽との結びつきも深く、
東洋には「2拍子」の血が流れ、
西洋には「3拍子」の血が流れている。
とも言われています。
拍の取り方、
特に頭の拍の取り方は、
日本人はアクセントを下にとりがちです。
これはいいとか悪いではなくて、
農耕民族の場合、アクセントが上では畑が耕せないですよね。
下にアクセントがないと耕せない。
逆に狩猟民族の場合、弓を放つときのリズムは
自分から外側に向かってベクトルがピョンと
上向きになりますよね。
だからアクセントは上。
生活と音楽の結びつきです。
私は学生の頃、
こういうのを知っていくのが楽しくてね
短い動画ですが、
これを見るとアクセントを上に取っているのがよくわかりますね。
こちらは下にとってます。
こういう比較って、おもしろい
「無いものねだり」っていうのは
人間の究極の真理だと
私は思っていますが、
私たちはきっと、
地に向かう血が流れているから
天に向かうものを追いかけたくなるのかもしれません。



それと同じように、
海外では「暗黒舞踊」への動員がスゴいのですよ。
こちらは「山海塾」の海外公演 ↓
彼らの芸術は、
西洋で大絶賛されています。
ね?
無いものねだりが人間の常なんだね笑。
2022/07/31トウシューズ雑学②
そもそも、踊りや舞いってなんでしょう。
日本語で言うと「舞踊」になるわけだけど、
舞踊ってなんでしょう。
踊りと舞いって、何が違うの?
という、
今日は
そんなこと今まで考えたこともなかったよシリーズで書きます(笑)。

「舞い」は、ココロが先。
ココロが先に躍り出して、そこにカラダがついてくる。
「踊り」は、カラダが先。
カラダが動き出して、そこに躍動感が生まれる。
さらっと書いたけど、
結構深いよね笑。
ココロとカラダは繋がっているって言うでしょ?
まさに、こういうことよね。
それに加え、
「舞い」は、回旋を意味します。
平行、水平の空間認識が「舞」です。

一方で、
「踊り」は、跳躍を意味します。
直角、垂直の空間認識が「踊」です。

なるほど~って思うでしょ?笑
私はこういう話が大好きです。
バレエのレッスンだと、
必ず先にバーレッスンをしてからセンターにうつりますよね。
逆は、ない。
これにもちゃんと意味があって、
バーレッスンは、垂直と水平を整えるためにやるのです。
これは、私は生徒たちにも話してます。
なんで、バーレッスンがあるのか。
なんで、最初が必ずプリエなのか。
なんで、最後はグランバットマンで締めるのか。
レッスンのひとつひとつには全部、意味がある。
意味があってやってます。
ダンスのレッスンだと、
必ず最初にアイソレーションをするはずです。
これも、縦横奥行き斜めを掴むためにやっています。
で、
話しを舞踊に戻します。
「舞」は、「神」に対して行われます。
「踊」は、「人」に対して行われます。
ここでようやく「神」というワードが出てきました。
③に続く→
2022/07/30トウシューズ雑学①
「ポアント」、「ポワント」って言葉、
聞いたことあるよね。
「ポアントレッスン」だったり
「はじめてのポワント」だったり
「ポアント何履いてる?」とか
「どのポワントがよかった?」とか。

point shoes = toe shoes
のこと
ポアント、ポワントは
トウシューズのことです。
すーんごい日本的に言うと
フランス語の oi って wa と発音しますから、
soirée ソワレ
eau de toilette オードトワレ
framboise フランボワーズ
のように、
読み方としては、
point は
「ポアント」より「ポワント」がふさわしいのかも。
でも
foie gras フォアグラは、フォワグラとは言わないから
「ポアント」と読むのもありだなと思うし、
まぁ別にどっちでもいいと思う笑。
ちなみに、
舞台裏や楽屋で
「トイトイトーイ!」って
めーっちゃ笑顔で言ってる人(海外の方)を、
映画やドキュメンタリーやライブや
今だったらTikTokやインスタなんかで、
見たり聞いたりしたことあるかもしれません。

「Toi toi toi!」
これはドイツ語です。
「大丈夫!」「うまくいくよ!」って
おまじないみたいなみたいなもので、
日本語に置き換えると
「くわばら くわばら」みたいなものかな。
Toi は、
ドイツ語の悪魔Teufel(トイフェル)の略語なんだと、
いつかどこかで聞いたことがあります。
②は舞踊の語源について →


